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奥秩父縦走

甲武信小屋では、ゴールデンウィーク前半に甲武信岳から金峰山へ向かう人は、 いちおう止めることになっている。いわく、ラッセル覚悟、途中ビバーク覚悟 だよと。

甲武信小屋は意外と高い場所にある。標高にすると二千二百m近くあるので、 聖平あたりとさして違いはない位置である。積雪も意外と深く、冬季はむしろ 標高の高い八ヶ岳の方が登りやすいくらいのものである。
だが、奥秩父だからもう積雪はないだろうと思って電話をかけてきて、ゴール デンウィーク中に1度は降雪があることを知るとびっくりする人が後を断たな い。
「えっ(絶句)…それだとアイゼンが必要ですよね。ちょっと検討してみます」と。



ゴールデンウィーク前に小屋をあけるが、このときはのきなみ登山道にトレー スはついてない。甲武信岳からエスケープルートのない金峰山までがどのよう な状況にあるかは想像に難くないだろう。

意外と、甲武信岳から大弛をこえて金峰山へ縦走しようと計画を立てる人は多 い。要するに甲武信岳も金峰山を百名山に入っていて、いっぺんに登りたいわ けである。そういう電話がかかってくるたびに、大変ですよ、と説明すること になる。

だが、そう説明すればするほど、自分で歩いてみたくなる。それも単独で。

ある年、自分でトレースをつけようと、GW初日が大弛越えになるように日付 を周到に準備して家を出た。もちろん、奥秩父全山縦走である。ただ、雲取山 だけはさんざん登っているので省略して、そのかわりに登ったことのない天平 尾根をのぼりにとった。

親川から入って、将監小屋泊、次が雁坂峠。燕岳付近から雪がではじめますが トレースがあるのでしんどくありません。計画通り連休初日の29日に甲武信 小屋に入りました。まだ、明日がメインの本番だというのに酔っ払いです。た だ、あまり酔っ払ってしまうと次の日の行動に影響が出るので節制はした。と いうよりも、まだこの頃は小屋では遠慮して飲んでいた時期だった。

「明日は大弛へ行くんですよー」
なんていう人が一杯いたので、あ、これは楽ちんだな、と思っていました。

僕が先頭で出発しました。水源分岐をこえてトレースがなくなって、踏み抜く とひざくらいの軽いラッセル。地図をみながらいきましたが、両門ノ頭を過ぎ る頃、現在地を特定できなくなります。まあ尾根伝いだしテープも貼ってある し道を間違えることはなかろうと思ってラッセルに専念します。予想よりはき つくありませんが、長期山行なので無駄に頑張ってはいけない、が効いていま す。あんまり頑張らずにだましだまし進みます。スパッツをしてても、スパッ ツの上まで踏み抜くので雪が入ってきます。靴下はもうぐちゃぐちゃで何か靴 のほうからはぴちゃぴちゃと音がしています。良くありません。冬山なら凍傷 になるところです。

ところが、こちらはラッセルで進んでいるのに、後ろからは誰もやってくる気 配がありません。結構国師とか大弛とか言っていた人は多かったのに、なんだ よみんな口ばっかりかよ。今年は交代要員がいるぜラッキーと思ったのに、こ うなったら1人でも行ってやるよ。ふんだ。

で、いけどもいけども東梓(2271.6三角点)がやってきません。散々歩 いて、どうやら見落として通り過ぎたんだな、と思った頃にピークの上に四角 の標柱がみつかったときには愕然とします。ウソだ、嘘だと言ってくれ。で、 上がってみて確認するとただの境界票のようでした。標柱が雪の上に出ている くらいですから積雪量は推して知るべしです。

このあとすぐ国師ノタルへやってきます。やっぱり東梓は見落として通過して しまったようです。さんざん歩いて、2150あたりまで下ってきた計算にな ります。最悪このあたりでビバークかと思ったのですが、結構いい時間で通過 です。
今日の最高点は2600ですので450mの登り。ここで高度計をあわせます。 あとはじっと目を閉じて、高度計が上がるのを耐え忍びます。と、何か物音が します。もう少しよく見てみると、人がやってくるようです。おおっ人だ人だ。 でももうお昼も回っています。大弛からにしてはちょっと時間が遅すぎます。 この時間では今日中には甲武信岳にたどり着けそうにないような気がします。 ちょっと遅れているのでしょうか。大丈夫でしょうか。続いて10分くらい遅 れてもう1人やってきました。今日は知り合いとすれ違うはずなので装備をチェッ クしてみましたがどうやら違う人みたいです。


ということで、この苦しい登りはトレースありに変わりました。これで楽にな るフンだ。と思ったのですが、たいして変わりません。足跡はえらい深いし、 歩幅は合わないので結局自分で足跡つけないといけないし、しかも足跡の上を 歩いているのになぜか沈みます。結局あんまりペースが変わらず、トレースが ついて楽になったのはルートファインディングをしなくて済む点だけでした。

国師ヶ岳へやってきたのは14時16分。展望はすっかり春霞です。せっかく 上がってきたピークなのだからもっとゆっくりすればいいのですが、今日は時 間もおしているので数分で出撃です。北奥千丈岳も往復して、あとは下るだけ です。
結局大弛へ着いたのは15時20分。思ったより早く着きました。
時間は9時間20分ですからほぼ計算通りです。コースタイムの1.5倍まで いきませんからやっぱり楽な部類でしょう。結局今日甲武信岳から大弛へやっ てきたのは僕一人だったようです。

ここで、ヒーローですよ。
シーズン最初に甲武信−大弛間を単独で歩いた人ということで、一晩のヒー ローになります。

この日、ビバークせずに行けたので、結局この後予定通り清里駅まで歩き通 しました。あのときの山行は、僕の山行史においても会心の1つだったと、 今でもそう思っている。

そして、あのときの思い出を胸に、もう1度GW初日に単独で先頭でラッセ ルでいってみたいと思っているのだが、ゴールデンウィークは甲武信小屋で つかまって手伝いをさせられるようになった。もう、あの山行が再びかなう 日はないのだと知った。

(2015.5.7 12:3)(by script)




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