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下界の酒

小屋明けの仕事はヘリポートでの荷造りからはじまる。どんな具 合に仕事をするのかはあまり知られていないのでちょっと簡単に 書きますと、

まずですね、もっこという荷物を吊るためのネットを広げまして、 その上にビニールシートを敷きます。その上に荷物を置いていく わけなんですけど、1つ1つ計量して重量あわせをします。でもっ て、置く位置も荷崩れしないように注意が必要です。中心(セン ター)から順に荷物を組み立てていきます。これは甲武信小屋と は違うヘリ会社の北アルプスの山小屋も同じやりかただったので 全国共通だと思います。吊れる重量はヘリや高度によって異なり ますが、甲武信小屋の場合700キロ位になります。
あとはもっこで荷物をくるんで、つり上げを待つわけなのですが、 荷造りから荷揚げまでの間に雨が降ってしまって、段ボールが濡 れたりすると厄介なので厳重に雨避けをします。甲武信小屋はあ りませんが、冷食(冷凍食品)なんかは当日でないと荷造りでき ないので空模様を見ながらやるわけです。
荷揚げのときは十分注意して梱包するわけなのですが、毎年必ず 積み忘れがあります。積み忘れたものはもう背負うしかないので 忘れると大変なことになります。トイレットペーパーを発注した のにティッシュペーパーがやってきて大変なことがありました。 濡らせないものだから、背負うにも晴れた日でないとどうしよう もありません。

ある年、荷造りした後に雪が降った年がありました。雪が積もる と荷物の上にかけたシートが凍りつく。凍りつくとはがせなくな るので、雪かきに出た。5月の話だから、車はもうノーマルタイ ヤだし、ヘリ会社の人もサポート隊は車でやってくる。荷物があ がるまでにも、苦労はいろいろあるわけである。

というわけで、荷揚げ前の下界での準備もあるので、小屋明けの ときは徳さんの家に集合になる。だが、その日は天気の都合で1 日動けない。どうするべかな、酒でも飲むべか、なんて話になっ た。徳さんの家は市街まで片道30キロ。タクシーや代行を頼む ととんでもない金額になる。
秩父にうまいホルモン屋があるんだけど
「だけど、帰りまさか酔っ払って運転して帰ってくるわけにいか んな。」

じゃあ、僕が運転しますから、ってことで、僕は食べる専門で車 を運転してでかけた。休肝日だったし、まあ別に僕は酒飲まなく ても死にはしない人なので、まあ1回限りだからいいや、と思っ て運転手を引き受けた。

そうしたら、次の年もまた同じ状況で、
「高砂(=ホルモン屋)いくか」

って、誰が運転するんですか?え?僕?


次の年もまた同じ状況で運転させられました。もう3年目になる と、当たり前のように僕が運転することになっていて、完全に計 算に入っているようでした。

甲武信岳の西沢渓谷側の登山口をおりてくると、ぶどうの農園が 広がっていて、あちこちにワイナリーがある。試飲ができるワイ ナリーもあって、1箇所お気に入りのシャトー(?)がある。誰 か乗せていくと帰りにここへ寄って、酔って帰るのがお約束でも ある。ところが僕は運転手なので飲めない。年中寄るこのワイナ リーのワインが、どんな味がするのか僕は全然知らないのである。 素直に買って帰ればいいのであるが、ちょっと食指が出ない。出 ないけど、「あそこへ寄ろう」なんて代名詞で通用する場所のワ インの味を全然知らないのも何なので、1本買ったことがある。 ANAの国際線のファーストクラスで出している白ワインで、1 本3700円くらいするやつを買った。2、3年セラーに寝かし ておいて、今度ゆっくり味見をすることにしようと思って楽しみ にしていた。
だが、その後そのワインは僕の口には入らなかった。僕の所に赤 と白と1本づつ譲ってほしい、という依頼がきて、たまたまその 時セラーに入っていた白が1本だけだったのでこいつを譲ってし まった。かくして、このワイナリーのワインはまだ味わえていな い。

小屋では調子こいて飲んでいるけど、下へ降りてきてからは酒と はとんと縁がないようである。

(2015.5.7 12:3)(by script)




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