サイトマップ | 更新停止のご案内 | このサイトについて

   

ヘリコプター

告白します。僕、ヘリに乗せられたことがあります。いや、遭難し たわけではなく。

歩荷でヘリが飛ばない年の、次の年のことだった。今度は近年まれ に見る積雪ということで、雪かきの要員が必要ということでGWに 呼ばれた。わりーけど今年も手伝いにきてくれいや、とか言って。 そのとき、入山がヘリかもしれないから乗員名簿に住所と氏名を書 かないといけないから、と言ってケータイにメールが入っていた。


当たり前だけど、普通にヘリには乗りたくない。だって、落ちてる んだよ。ヘリおっこって、その余波でヘリが飛ばなくて、それで歩 荷した年の次の年の話だからね。
だけど、僕、結婚するときに徳さんに証人を頼んだのである。ちょっ と大きい恩義になるから、また大雪で徳さんが困ってるのは見過ご せないわけだ。そういう事情があるので、まあ1回限り、と思って ひきうけた。
というよりも、多分歩いて登るんだろうと思っていた。小屋番でも ないし、3人いれば多少のラッセルはできる。ヘリ代がとんでもな い金額だってのも知っている。

そうしたら、栃本のヘリポートであっさりヘリにのせられた。

当たり前だけど、怖い。

ぶいーんってのせられて、栃本から甲武信小屋までは結構距離があ る。ぐっとこらえて乗る。ヘリに乗る段に安全講習を受けるわけな んだが、おりたらテールローターには近づかず前方へ離れてくださ い、なんていうもんだから、それが頭の中でぐるぐるする。前方へ 前方へムニャムニャ。左へ飛び降りたら崖だからおりたら右へ行く こととか、なんかもう不安にさせられるような注意書きがいろいろ あってそれを反芻するばかりで生きた心地がしない。

でもって、ようやく降りる段になって、

「風が強いのでいったん帰還します」

とかいって、栃本のヘリポートへ逆戻り。逆戻りだから倍の距離を 乗ることになる。そして、もう1回乗せられることになった。
空中でドアをあけて、

「はいじゃあここから飛び降りてください」

ひぃぃぃぃーーー

とびおりたら、ポケットの中に入れておいた財布がざざざーっと 雪面を滑っていく。あわてて拾いにいくが、落ちたのが崖側だっ たら大変なことになっていた。

かくして、ヘリコプター体験は散々なものになった。

それで終わりだろうと思ったら、また翌年も頼まれた。また乗員 名簿に云々の話があったのだが、この年は積雪は例年どおり。ま あ、今年こそは普通に歩いていくんだろうと思ったら、またあっ さりヘリに乗せられた。

歩いてではなくてヘリで入山するのは、どうも荷揚げのときに、 下で荷造りしておいて、上で荷解きする要員が要るので、荷物と 同時に人員が上に上がらないといけない、歩いている時間的余裕 がないからだろう、というのもわかった。


その次の年は、今度は住所と名前を聞かれなかったので、今度こ そ歩いていくのだろうと思ったら、再びあっさりヘリに乗せられ た。もう、僕の住所と氏名はデフォルトで記録されていて、自動 的に乗員名簿に記載されるしくみになっているようだ。


ある時、小屋番と話をした。うちの子供が飛行機で実家へ帰る話 になって、
「1年に1度くらいは飛行機に乗ってみたいなあ」
「いいじゃないですか、1年に1度ヘリコプターに乗れるんだから」
「あれはこわいからやだ」

だそうだ。要するにみんな、あれには乗りたくないと思っている ようなのである。


(2015.5.7 12:3)(by script)




更新)


mixiチェック

mailto:mailaddress

tozan.net - http://tozan.net