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花火大会

僕の携帯電話には小屋番の電話番号が登録されている。むこうから連絡が くることはほとんどないのだが、それでも一応小屋と直接常時つながって いる、ということになる。

あるとき、風のうわさに今日の小屋の従食(従業員食事)はすきやきだ、 と聞きつけた。すきやきはメチャメチャ食べたいので、とるものもとらず 頑張ってでかけることにした。雨の予報だったが、肉の欲望にはそんなも のは何の障害にもなりません。
「こんにちはー今日は夕食がすきやきだって聞いたからきたんですよー」
「徳さんおりちゃってしばらく登ってこないから何も食べるもんねーよ」
…おかしいなあ、今日はすきやきだって聞いてたのに。だってほら、ザッ クの中みてくださいよ。肉も入ってるし、ネギも入ってるし、あと(長い ので省略)も入ってる。だから、絶対すきやきだと思ったんだけどなあ。 こらっ
「今日はお客さん少ないし、夕食はすきやきにするか」
うふっ。そうくると思った。やっぱり今日は予想通りすきやきです。


小屋番が山の上で食べるものはどうしても日持ちするものばかりになっ てしまいます。僕も小屋明けのときはしばらく滞在するわけですが、毎 年おなじようなものをあげて、同じようなものを食べている。ただでさ え欲求が満たされない山の上。まあ、食べるものくらいは豪勢なやつが いい。すきやきは意外と都合がいいのである。割下やたまごといった基 本的な食材は小屋に常備されているから、肉など限られた材料だけ持て ばいい。

もっと手抜きしたときはステーキだったが、いちばん手抜きしたときは ホットケーキだった。粉だけ持てばいいのでいくらも背負う必要がない。

だが、失敗することもある。
あるとき、小屋に「さんまたべたい?」とメールした。返事がかえって こないので、まあいいやと思ってさんまと、炭とバーベキューコンロを 背負った。だが、小屋番の方では全然把握してなかったようで、突然き た、ということになってしまった。おまけに炭火で焼こうと思ったさん まは、お客さんがいるから炭火は無理、ということでグリルで焼くとい う結末である。この一件で、わっきーは突然くるからなあ、という具合 に言われるようになった。
もっと書くと、小屋に七輪があるので、バーベキューコンロなんか背負 う必要はなかったのである。

だいたい常連さんがどうしているかというと、あらかじめ電話して、業 務で使うものを買ってボッカしているのが通例だというのを知ったのは、 それからだいぶ遅くなってからの話である。すきやきと酒だけ背負って 突然行くのは僕だけだったのである。

その常連さんも、不思議なものを背負ってくることがある。自分の誕生 日だということでケーキを背負ってきた人がいた。その勇気は称賛に値 するが、残念なことにザックをひっくりかえしてしまって、僕に回って きたときにはグチャグチャになっていた。もしくは、刺身を背負ってく る人もいる。さすがに刺身は冷やしたまま持ってこないといけないから 勇気が要るな、と僕は思った。荷物背負って、普通の人と同じ道を歩い ているのである。



あるとき、家で寝ていると枕元に人が立った。枕元に人がたって、明日 は花火大会だぞ。と言っている。ということで、花火とゆかたを持って 甲武信小屋をめざした。だが、このときもお客さんがいるということで 花火大会はできなかった。次にいったときは花火はなかったのでいつか やったようなのであるが、それがいつだったのかは、僕には知る由もな い。かくして、今のところ小屋での花火大会に立ち会うことはできてい ない。

(2015.5.7 12:3)(by script)




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