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チューこ焼酎

いまどきの小屋はたいてい小屋内は禁煙になっている。たばこを 吸うときは必然的に席をたって小屋の外に出ることになるわけだ。

僕は基本的に蒸留酒は苦手なのだが、山小屋の小屋番の定番の酒 といえば焼酎ということになる。いまどきはみんな空輸でくるが、 歩荷する都合上小屋番の飲む酒はなるべく軽い方がいい。小屋番 の酒が焼酎なのは、グラムあたりのアルコール量が多くて、なお かつお湯で割るとたくさん量が飲めるのが結局焼酎だから、とい うことに端を発しているらしい。

その、焼酎という物体にはじめて出会ったのが、たまたまアルバ イトに入った槍沢ロッヂだった。山小屋というものに対して何の 予備知識もなく、毎晩しこたま酒を飲むとだけ聞かされて、実際 に山小屋に行くと説明されたのが、「ビールは荷揚げの日にしか 飲めなくて、あとは焼酎なんだけど」というものだった。
このときは20歳を少し過ぎたばかりで、なにしろ酒といえばビー ルとワイン位しか知らなかった。「焼酎飲める?」と聞かれて、 いや…ということで結局しこたまどころか下山するまでシラフで いるという健康的な生活をすることになった。

その後甲武信小屋とつながって、たまたま屋久島へいく機会があっ た。山小屋といえば焼酎だと聞いていたので、おみやげに三岳と いう珍しい焼酎を買った。この、はるか遠くの地から持ち帰った 1本の抜栓にたちあったのだが、このときも一滴も口にしないと いう、バッカス様に叩かれそうなもったいないことをやってのけ た。その後焼酎を口にする機会を得たが、いまだに焼酎は苦手で ある。梅干でも入れないと飲めないのである。と書いたのがバレ ると、客食の梅干が出てくる可能性があるのでこっそり書く。

ある時、小屋番と何人かで小屋で飲んでいた。僕は相変わらず梅 酒なんぞを舐めていたのだが、この小屋番氏が焼酎のコップをあ けたのを機にたばこを吸いに席を立った。僕は1人で酒を舐めて いたのだが、相伴の女性が席を立っている間に焼酎を作る。帰っ てきて、焼酎のコップがあくとまた席を立つ。その間にまた焼酎 ができる。帰ってきて、
「なんかわんこ焼酎みたいだな」
というところから、わんこ焼酎という言葉が生まれた。この後 話がにゃんこ焼酎にまで発展したところでおひらきになった。

そこで終われば別におもしろい話ではないのだが、後日談があ る。この女性が下山したあとに、僕と2人で飲んでいたとき、 焼酎があいたタイミングで席をあけた。ただし、このときはお 椀ならぬコップを伏せてでかけていった。わんこ焼酎のごちそ うさまの合図だ。しかし、コップをひっくりかえすと高台があ る。これを見逃さなかった。コップを伏せたまま高台に焼酎を 注いでみた。
帰ってきた小屋番氏、おまえそこなんかよく洗ってないんだか ら明日おなかこわしたらおまえのせいだからな、とかいいなが らチューチュー焼酎をすする。かくして、にゃんこ焼酎から発 展したチューこ焼酎は甲武信小屋用語として刻まれることになっ た。

「ねえねえ、またチューこ焼酎やる?」
「やだよ」
「じゃあ、ちゃんこ焼酎はどう?」
「お前がやれ」

というわけで、ちゃんこ焼酎という言葉も生まれたのだが、 それが一体何を意味しているのかは、想像にお任せする。

(2015.5.7 12:3)(by script)




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