サイトマップ | 更新停止のご案内 | このサイトについて


   

富士登山の雨具考

僕、富士登山にゴアテックスの雨具買えという人が気に食わないので ある。いや、別にお金がありあまっているのなら構わないのだが、登 山とはいろいろ物入りである。人の勧めのままにあれも揃えてこれも 揃えてしていたら、きっとボーナスがなくなるくらいの出費は覚悟し なければならない。たかが富士登山である。ヨーロッパ旅行をするよ うなお金を、それも無駄に出してどうするか、である。

なぜ「ゴア(テックス)の雨具が絶対必要ですよ」という輩が気に入らな いかといえば、このようなことを言い出す人が、本当に富士山という フィールドでゴアテックスの雨具と、そうでない雨具を着て、比べて みたとは思えないからである。じゃあお前はどうなのかというと、僕 はビニールのポンチョと、PVCのセパレート雨具と、ゴアテックス ではない防水透湿素材のセパレート雨具と、ゴアテックスの雨具と、 少なくとも4種類は「富士山で」試したのである。富士山以外の山で はもう少しいろいろ試したことがある。

その結果、富士山に登るのに、ポンチョはダメだった。でも、PVC の雨具があれば、とりあえずは大丈夫だろう、と判断できた。

PVCの雨具であれば3000円も出すといいものが買える。僕がオ ススメするクラスの、多少つくりのよい防水透湿性雨具であれば 4000円。登山用品店の店員が勧めるゴアテックス以外の防水透湿 性素材の雨具でも、1万円を少し出るくらいだろう。ところが、ゴア テックスの雨具は最低でも2万5千円はする。トップメーカーのゴア テックス雨具は上下で3万5千円である。


普通の人が雨具を取り出すのは、通常は山頂なのである。これはどう いうことかというと、ご来光を見るために山頂へ向かう。山頂へ向か うときは運動しているから体温も高い。寒さもそれほど感じない。で も、山頂でご来光を待つために立ち止まれば、汗が冷えて急速に寒さ を感じるようになる。何か着るものはないかと思ってザックをひっか きまわすと出てくるのが雨具である。

ゴアテックスの雨具というのは、防水透湿性素材の中でも、特に湿度 を放出する能力が高い。湿度を放出する能力が高いということは、雨 の中山頂へ向かって歩いている間(=運動中)に出る汗を溜め込まな い。運動後体が汗で冷えることが少ないということである。これはメ リットだし、メーカーもそう謳っている。僕も異議はない。

でも、実際に着るのは、運動中ではない可能性の方が高いのである。

湿度が出て行くということは、湿気といっしょに、雨具の中の暖かい 空気も外へ出て行くということなのである。有名メーカーのゴアテッ クス雨具は、素材だけでなく、首元などからいかに湿った空気を逃が すかを工夫してカッティングしてある。雨具というのは、いかに防寒 具として無能たるか腐心して作られているといっても過言ではない。

動かない間に着る。下山中の汗をかかない時に着る。そのときに限っ て言えば、風を通すゴアテックスの雨具より、風を通さないPVC雨 具の方が暖かい可能性も考えられるのである。

このことを説明できて、なおかつゴアテックスの雨具が必要ですよ、 と言い張る人の意見は傾聴に値するだろう。
登山用品のお店の、少なくとも僕が知っている店員は、1度きりの富 士登山にゴアテックスの雨具を売るようなことはしない。モノを売り たい登山用品店の店員が、そこまでは必要ないですよ、と言い切った 商品が「必要」だと理路整然と説明できるのであれば、その理由をぜ ひとも聞いてみたい。

雨の中、上へ向かうには、ゴアテックスは最強である。これは間違い ないし、否定できない。
南アルプスでは、隣の小屋まで3時間、登山口までは3日。横殴りの 雨が降ろうとも、もう歩くしかないシチュエーションもあるのである。 次の日に、今着ているものが濡れていたら困るのである。初冬ならそ れが生死に関わるのである。だから僕は高いお金を出してゴアテック スの雨具を買った。

でも、場所は富士山である。登山口で雨が降っていて、それもかなり 強い雨が降っているような状態で、上へ向かうだろうか。
小降りであればゴアテックス雨具の透湿性よりも、雨具の前ファスナー をあけておくなどして放湿したほうが、よほど効率がいい。だから、 ゴアテックスの真価が発揮されるのは、それなりに強い雨が降ってい るときに限られる。

このときに、あなたは上へ向かうだろうか。

この問いに、自信を持ってYesと言えるのであれば、店員さんお勧 めの1万円クラスの雨具は買って損はない。本当にそういう、1シー ズンに何度もないようなシチュエーションにぶちあたってしまえば、 僕がお勧めする4000円クラスの防水透湿性素材の雨具であれば、 やはり1万円クラスの雨具よりは辛い思いをするだろう。でも、登頂 を妨げるほどの差が出るとは思えない。そんな不運なシチュエーショ ンを想定して、戦車みたいに完璧な装備を求めるよりは、潔くその日 はあきらめて別の日に登った方が幸せである。


現実的に言えば、富士山の山頂でみかける雨具の、1割くらいはポン チョである。2割くらいは、ダイソーか何かで売っていそうな、透明 ビニールのペナペナ雨具である。このクラスの雨具は、やはり冷たい 思いをすることだろうし、破れたりすることもある。雨が降っている 中上へ向かうのは、かなり苦しい思いをすることだろう。だから、僕 はこれよりはいいクラスの、一応しっかりした作りの4000円位の 防水透湿性素材の雨具がお勧めなのである。このクラスなら、登山口 で多少雨脚が強くても、3時間くらいでたどり着く山小屋までは登っ てみようか、という選択ができる。もしくは小屋に泊まった翌日雨が 降っていて、登るか下るか選択するときに、ビニール雨具では降りる 選択をするところが、多少辛い思いをしても登るか、またにするか選 択するチャンスはある。

推奨する気はないが、条件が悪くなければ、透明ビニールの雨具でも 登れてしまうのである。破れればガムテープを貼ればいい。そして、 実際に富士山の(僕が見た)山小屋で売っている雨具も、この透明ビ ニールの雨具なのである。
でも、それではやっぱり辛いし、実際に雨が降ってきたら登るか下る かの選択肢が狭まるのでもう少しいいものを買った方がいいでしょう。 これが僕の考えである。

ゴアテックスの雨具は無敵ではない。表面は防水透湿性でも、雨具の 下に着ているウエアが綿であれば、汗はウエアが吸収してしまい、ゴ アテックス雨具の表面からは出ていかないのである。ゴアテックスの 雨具を生かすためには、最低でも下着は化繊にしなければ意味がない。

冒頭の言葉に戻る。

「ゴアテックスの雨具が必要」と説いて回る人は、たぶん、ゴアの雨 具を持った登山経験者が回りにいて、その人だけご来光待ちでも快適 そうにしていた、とか、その程度の経験で物事を語っているのだと思 う。でも、その人の雨具の下のウエアがどんなもので、どんな修羅場 をくぐりぬけてきた登山者で、といったことは何も語られない。
あるいは、自分で買って持っていった経験かもしれない。これには罠 がある。雨具の素材というものを比較していないから、「ゴアテック ス」という素材がよかったのか、「雨具」を持参したのがよかったの か、その人にとっては判断できないのである。そして、ゴアテックス の雨具が必要と言う人は、実は「風を防げるものであれば何でもよかっ た」可能性が高いのである。



今後、ずっと山を続けていきたい、と思った人は、ゴアテックスか、 最低でも店員さんおすすめクラスの雨具は買った方がいい。でも、そ うでないのであれば、店員さんおすすめクラス以上の雨具には手を出 さない方がいい。その価値は、みぞれまじりの初冬の山や、もしくは 洪水注意報が出るような雨の中1日歩かないといけないようなシチュ エーションでこそ発揮できるものであって、そしてその値段の大半は、 耐久性や信頼性のために支払うものである。1度きりの富士山に耐久 性を求めても仕方がないのである。

写真
富士山の深い森 3合目付近

実は、富士山サイトにゴアテックス雨具信奉論を広げてしまったのは、ほかならぬ僕なのです。15年くらい前、まだ掲示板なんていうCGIの存在自体珍しかった頃ですよ。富士登山のコミュニティなんかまだサンプラスの掲示板くらいしかなくて、そこで僕が「雨具は生死を左右する。ゴアテックスを買った方がいい」と、説いていた時期があった。

言い訳すると、当時はゴアテックス以外の防水透湿性素材の性能はたしかに低かった。また、ホームセンターなどでは土木作業用の雨具ぐらいしか置いてなかった。登山ブームがきて、登山向けの安い雨具が出てきたのはちょうどその頃だったし、僕の知識も多くはなかった。まだそんなにいろいろ試していない、とにかくポンチョの失敗だけしか経験がなかった時期である。

数えるほどしかないコミュニティの発言だから、みーんなそれを見てる。影響力があったんですね。だから多分何十人かは僕の言葉を信じてゴアの雨具買ったろうし、もちろんゴアだから値段に目をつぶれば性能は文句なしである。そういう人がゴアはいい、と言えば、次の人もやっぱりゴアを買って、ゴアはいいと言う。でも、経験を積んでいって、僕も知識が増える。道具も時間がたてば進化する。日がたつにつれ、ゴアテックスである必要はないんじゃないか、と感じるようになった。

勿論、僕は山ヤだからさ、ホントはゴアテックスの雨具買ってもらって、で、富士山だけではなくてもっとずっと末永く登山を楽しんでもらえれば、それが一番本望ですけどね。富士山以外にも面白い山はいっぱいあるからさ。

写真
富士山には古いゴミがたくさん眠っている


富士山1度だけだよ、というのであれば、ベルグのストームセイバー
http://www.mizuno.jp/catalog/category/10210101/
が断然おすすめです。市価1万1千円くらいで、透湿性に関しては、ほぼゴアテックスと同一と考
えていいと思います。ゴアテックス製の雨具と比べると、若干重いのと、あと耐久性がゴアほどで
はない(店員談)といった感じで、春〜秋のふつうの登山にも十分使える実力を持っています。

予算的に厳しいようでしたら、もう少し安いものでも構わんと思うのですが…
雨具ナシで、下手こいたら死ぬというのは、ホントウの話です。疲労凍死っていうんですけど、2,3
年に1度(雨具ありかなしかは知りませんけど)風に吹かれて死んじゃったという人はいますし、そ
れも、結構僕に近いところで、Web繋がりの人が参加した(北海道の)ツアーで1人死んじゃったっ
てのがあります。それ以来同じところで3,4回事故があるんで、上ホロカメットク山は僕的に魔の
山に認定していますが、それは余談として、

透湿素材でない雨具を着て行動すると、あっという間に服が濡れてきます。これはどういうことかと
いうと、内側から出る汗の量はバカにならず、少なくとも服をぬらすには十分な量だ、ということです。
雨具の性能が良くても、雨具の下に着ているものが湿気を放出する素材でなければ、下着とかシャ
ツとかがみんな汗の水分を吸っちゃって、湿気はほとんど外へは出ていきません。アウターの雨具
ばっかり良くても、結局服は濡れてしまうんです。

透湿素材の雨具の性能を生かすには、その下の服が化繊の、湿気を放出する機能を持っていなけ
ればいけないわけなんですけど、上から下まで全部登山用のウェアで揃えろ、というのは金銭的に
酷な話でして…ユニクロのドライTとかフリースとかを組み合わせればかなり満足いくところまでいく
と思うのですが、ビニール袋に包んだ着替えを1セット持って行くといったことでもだいぶ違うとは思
います。

僕らが朝から雨で行動しないといけないときは、雨具の下は1枚減らして少し涼しいくらいにして汗を
かかないように行動したり、あと降り方によっては前ファスナーは締めずにできるだけ空気が出入り
する(=放湿する)ようにしたりします。それでもやっぱり、上から下まで全部化繊でかためてゴアテッ
クス着ていても、1日行動すれば多少濡れてしまうのは避けられません。

雨が降ったら、基本的に山はしんどいんですよ。奥秩父の苔むした樹林帯であれば雨もまた見所が
ありますが、富士山はホントに耐えるだけ。だから、雨の日に登った人が、辛かった、って言うのはあ
る意味当然だと思います。ただ、それが本当に雨具に由来して辛いのか、単純に雨だったから辛
かったのかは、行間から読み取るのはすごく難しいことだと思います。そして、晴れてさえいれば、雨
具は風さえ防げればなんでもいい公算が大なのです。ゴアテックスどころか、3000円くらいのPVC
雨具でも十分なんだ。

結論から言うと、雨の日になんか行くな(爆)

なんですけど、日程も決められちゃって雨でも突撃しないといけないという状況も想定した上で考え
ると、肌に触れるところはできれば化繊にして、雨具は上述の雨具。そして、着替えが1セット、といっ
た感じでいいと思います。勿論、おカネをかければかけるだけ快適にはなりますが、それでも濡れる
ことには変わりないからね…

写真
バイケイソウ(多分) 富士宮口3合目付近
5月

(2015.5.8 7:10)(by script)

(2015.5.8 9:2)(by script)




更新)


mixiチェック

mailto:mailaddress

tozan.net - http://tozan.net