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檜尾岳遭難から学ぶべきこと

檜尾岳の遭難は、残念ながら、4人目の心肺停止が確認されたことで終 了をみた。
この結果は非常に残念に思うが、僕自身へのメッセージも含めて、この 事故から学ぶべきことを考えていきたいと思う。

まだ事故の全容があきらかになったわけではないが、状況から判断する 限り、最初のひきがねになったのは「低体温症」という事象であると考えら れる。昔は「疲労凍死」と呼ばれていたが、今は疲労凍死とは言わない。

低体温症による事故は、ニュースになるだけでも数年に1度あり、大規模 な事故になりやすいと思う。ニュースにならない事故は毎年のようにあり、 僕のマイミクさんも現場に居合わせたことがあるようだ。

僕自身、そして、最近山をはじめた山ボーイ山ガールの人は、まず低体温 症とは何なのか、というものを、きちんと学ばなければならないと思う。秋口、 春先は当然のこと、夏場でも注意が必要であることはとくに肝に命じておか なければならない。
低体温症について、詳しく知りたい人は、「トムラウシ山遭難はなぜ起きたの か」という本が非常に詳しい。低体温症の何たるかを知らない人には、ぜひ 読んで貰いたい。

今回の事故は、トムラウシでの事故を、まるっきりそのままトレースしたような 事故だったように思う。雨の中縦走を強行して、出発わずか1時間少々の場 所で1人目が動けなくなった。低体温症の恐いところは、ここである。わずか 1時間の距離は、人の命を奪うのに十分なのである。



僕は、この週はmixiのコミュの方で、「今週末アルプスの稜線歩くつもりの人 は、本当に本当にお気をつけて。僕はちょっと中止か転進かをおすすめするよ。」

と書いている。それでも日曜日は持ったみたいだったが、月曜日は…

テント場で、「今頃どっかで事故が起きているのかなあ」なんて話もした。 正直、月曜日の悪天→事故、は土曜日の段階で完全に読めていた、と いっていい。 僕らだったら、空木まではいっただろうが、そこから縦走す ることは完全に断念だった、と思いたい。思いたい、というのは、僕はつっ こんでしまった前歴があるからだ。


今回、一行は池山尾根をのぼり、空木岳経由で木曽殿山荘に宿泊している。 木曽殿山荘で、停滞、もしくは下山を選択していたとしたら、今回の事故は おきなかったはずだ。僕はこの判断の中に、池山尾根を下っても宝剣岳ま でいっても、時間的には同等、という判断があったのではないかと思ってい る。だが、風雨の稜線を行動することと、風雨の樹林帯を行動することでは、 あきらかに危険性は変わってくると思う。その、危険性の評価の認識があっ たかどうかは、僕は疑わしいと思っている。

トムラウシの事故の最大のミスが「ヒサゴ沼を放棄したこと」であったのと同 様に、この事故の最大のミスは、「木曽殿山荘を放棄して縦走に向かってし まったこと」にあると思う。結果、わずか1時間そこそこの場所で1人目が行 動不能になってしまう。

1人目が行動不能になるということは、回りの人間ももうアブナイということで ある。この時点で、強力なリーダーが、檜尾岳の避難小屋を確保することを 宣言していれば、おそらく死者は最低限で済んだはずである。だが、檜尾の 避難小屋を通過して、宝剣のほうへ向かっている。この事故の第2のミスは、 この点ではなかろうか。結果、檜尾の避難小屋より先の、島田娘や濁沢大峰 あたりで斃れた人がみつかった。この人達は、檜尾の避難小屋を確保してい たら、あるいは死なずに済んだのかもしれないと思うと胸が痛む。

この事故の最後の砦は、ツェルトだったと思う。ツェルトは日本の山特有の装備だ と思うのだが、彼の国では馴染みのない装備だったのかもしれない。日本特有の 高山の雨風の厳しさを理解した上で、日本特有の装備を整えていたとしたら、もう すこし生還する人は多かったのではなかろうか。そういう意味で、個人でツェルト を持っていなかったという、トムラウシ事故とまったく同じシナリオを描いて事故が ふたたび起きてしまったことが斬鬼に堪えない。 3000mの稜線を行動するので あれば、やはり夏場でもツェルトは持つべきではないだろうか。

遭難している、という認識がなく、雨天の中いつまでも歩き続けて体温を低下さ せつづけていたら、それは最悪な判断だったといっていいだろう。低体温症は、 自覚症状なしに進行していくと聞く。まず、1人目が行動できなくなった時点で、 完全な遭難であるという認識をしなければならなかったのではないだろうか。そ の、認識ができていれば、あるいはその後の行動も違うものになっていただろう と思う。


今回の事故において、まず、僕は、事前に警鐘を鳴らさなければならないような 不安定な天気だったことはまず注目しなければならない。雨具などの装備は昔 と比べ格段によくなったが、人間が無敵になったわけではない。風雨の中無制 限に行動できるような無敵の雨具は人類はまだ手に入れていない、ということを 認識しなければならず、やはり天気を見ながら行動の是非を判断しなければな らない、ということは、まず学ばなければならない。1人目の行動不能は、出発 わずか1時間の距離である。もう、出発が判断ミスであったことは火を見るより明 らかだと思います。

そして、1人目の行動不能者が出た時点で、全員に危険が及んでいることを認識 しないといけない。行動を続けるのではなく、生命を守ることに全力にならなけれ ばならない。そのためには、夏場でも3000mの稜線を行動するのであれば、ツェ ルトを持参して、非常時に備えないといけないと思う。

トムラウシ山で生死をわけた事象、雨具のよしあしや、もしくは着込んだ服の違い、 摂取した栄養の違いなどは、前述の書に詳しい。もちろんそういったことは知って おいて損はないが、やはり、今回は、山の天気というものを、甘く見ていて、それが 大量遭難につながったのではないかという思いが消えない。この日山小屋さえ放 棄しなければ、誰も死ぬことはなかったのではなかろうか。



(2013.7.30)

(2015.5.7 13:11)(by script)




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