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散々な日の思い出

今にして思えば、雇われオーナーごときにバイトをクビにする権限などないのだが、 たまたまひどいオーナーにあたってしまったと当時は思ったものだ。

島々宿で野宿した年の、そうさなあ、7、8年くらい前に、北アルプスの、ある山小屋に アルバイトに入ったことがある。行き先はよく吟味したわけではなく、僕の乏しい登山 経験の中で行ったことのある唯一の山小屋を選んだ。履歴書を書いて応募した後、 催促の電話までかけたところ、僕の希望のAという山小屋ではなくBという山小屋な らあきができたからすぐ入れる、という話だったので、この話にのった。

だが、このオーナーがちょっと曲者で、険悪な雰囲気の山小屋だった。口癖がまた、 ことあるごとに「山をおりてもらう」とかいうわけですよ。
しばらくは我慢していたんですけど、このオーナーが休暇に入る数日前についに我慢 できなくなって、「それじゃあ山をおります」って、言っちゃった。

もう数日我慢していれば、あとはもうハイシーズンでメチャメチャ忙しくなるわけだから 文句言われる暇もなく、ひと夏乗り切ったはずだった。だけど、この日社長と外仕事をし て、ああいい人だなあ、って思っちゃった。で、小屋へ戻ると落差が大きすぎた。


あんな季節にあきができたってことは、多分、前の人も同じような理由で降りちゃったん だろうね。


で、時間は夕方です。メチャメチャ飛ばしても上高地発のバスには間に合わない。ようや くおりてきたところにはタクシーが1台だけ。財布の中にはタクシーを頼むほどのお金は 入っていない。まあ、順当にいけば小梨平でツェルト泊です。ですが、幕営料を払ってし まうとバスに乗るお金がないというせっぱつまった状況だった。

仕方がないので、歩きました。釜トンネルをこえて。
で、坂巻温泉で泊まろうと思ったのですが、カード払いはできませんということで、お断り されてしまいます。もう、何もありません。

沢渡の駐車場まで真っ暗闇の中を歩いて、バス停の屋根の下で寝た。いや、正確には寝 転がっただけで眠ることなんかできなかった。

夜半から雨が降り出した。夢破れた日だった。泣いていた。山はどす黒く深かった。


翌朝、松本駅から事務所へ電話をかけた。
「申し訳ありません…」



僕はこの一件はよかったと思っている。このとき深く小屋番稼業とかかわらなかっ たことで今の自分があると思っている。

(2015.5.7 13:12)(by script)




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