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荒天の秋山

登山というものは、無事に山頂を踏んで帰ってくれば成功したといえる。 だが、本当に無事に山頂を踏んで帰ってくれば、あらゆる登山が成功だ といえるだろうか。

今、この雨の中、富士山に登っている(と思しき)人からメッセが入っ ている。これが、どんな手練で、どんな装備でいったのか知らないが、 10月の富士山はどう公平に見ても冬山だ。とくにこの時期は富士山に 限った話ではないが、みぞれが混じったりして、疲労凍死や疲労凍死ま がいの事故がおきるのは毎年の話である。晴れれば夏山、降れば雪山の いちばん油断ならない、いちばん難しい時期なんだよ。夏は山小屋とい うセーフティネットがあるから、素人がとんでもない天候のときに登っ たとしても、まあ疲労凍死「まがい」で済むかも知らんが、今時期に何 かあれば、本当に死んでしまう。ゴアテックスの雨具だって着っぱなし で1日行動すれば中の服は濡れてくる。それが、最終的に生死を左右す るんだよ。
ベテランだって天気を見ながら、いちばん安全な日を選んで登る。それ が冬山だ。それを、こいつはわざわざ雨の日を選んでつっこんだ。バカ じゃないか。毎年毎年、マイトシのように死人騒ぎが出るのに、まだつっ こむか。

さっき見たら、山頂付近の風速は20m以上。気温は−0.9度だから、天 候は一番やっかいなみぞれになっている可能性が大だ。まあ死なずに帰っ てきてほしいとは思っているが、この御人が、仮に山頂を踏んで帰ってき たとして、これが果たして本当に登山として成功だと言えるだろうか。僕 は間違いなく「否」だといいきれる。

先に八ヶ岳へ行った。山頂の山小屋ではインターネットに繋がるようで、 天気予報のページをひらいていた。いわく、午前中晴れ、午後曇り。僕は これを危惧した。天気予報というのは下界のためのものであって、山の上 のためのものではない。山の上は下界より先に悪天に捕まり、下界よりも 余計に荒れる「もの」なのである。この天気予報を見て、「午前中は天気 が持つ」なんて読んでいる人はもう山はやめた方がいい。少なくとも、秋 口のいちばん天気によって天国と地獄が左右される時期の山はやめるべき だ。この天気予報は、「遅くとも昼前にはくずれはじめる」と読まなけれ ばいけない。
僕はこの山行はリーダーじゃなかったわけだが、このリーダーは午後イチ 位まで稜線で行動し、夕方下山する計画をたてていた。僕はどうかと思っ たんだが、まあまさか午後イチで雪になったりはしないだろうし、13時 くらいまで天気が持てばあとは荒れても樹林帯と林道歩きだから、いちお うリーダーの判断をたてといて、あとでリーダーをチクチクしながらこれ だから秋の山は油断ならないと説けばいいかな、と思ってた。結果、この 日は13時頃から雨にたたられた。想定していた中では最悪の天候になっ たわけだ。稜線組がたまたま早く下山してきたからよかったが、もし予定 通りだったら、3時間近く秋の雨の中を歩く羽目になった。
この山行は、成功だったかどうかはかなり微妙なセンにいるが、僕の目には かなりあぶなっかしいと映った。

登山というのは山頂を踏むという行為であって、山頂は崇高であり山頂を踏 むことに対して尽力しなければならないことはいうまでもない。山頂を踏ま ない登山は不毛であるとさえいえる。だが、そこには「大きな判断のミスが なく」という前置詞がつくのではないだろうか。どこまでもつっこむ神風部 隊では、結果的に登頂したとしても、それは僕は成功した登山だとは思わな い。

俺、「制覇」という言葉を、ふざけんな、と思ってるの。山は制覇するも のでもなければ、感謝と畏敬の心をささげて「登らせてもらう」ものだ。平 気で制覇なんて言葉を口にするような奴はホント帰れ帰れだ。制覇なんて気 持ちで登ってる奴はそのうち事故起こすから。

過日の、8月9日の富士山もそうだった。あの、下界にいるにも恐怖を感じ るような雷の中悠然と歩いていて、そして事故にあった。そこには自然に対 する畏怖の心など微塵もない。あの雨の中山に登るなんて正気ではないし、 だからあの日は僕は家で寝ていた。じっと高気圧が張り出すのを待っていた し、結果、この8月は2度しか山へ行けなかった。
8月23日の、南岳の滑落もそうだろう。まっすぐ下山すればいいものを、 1日雨の中槍から南岳まで行動して、体力を消耗した挙句滑落。どう考えて も天候判断を甘くみていたとしか思えない。年齢と登山経験からいえば、こ の人はそもそも槍なんか無理だったんだよ。

僕は、10月の富士山を(自分が登ったこともないくせに)反射的にふざけ るな、と書く御人はどうかと思っているが、それは「晴天の日に限って」の ことである。雨の高峰なんか登るもんじゃないし、まして秋口ならなおのこ とだ。

まあ、いろいろ言っても、そう簡単に人は死ぬもんじゃない。命がけの代表 のようなヒマラヤだって、ベースキャンプより上へ行った人で死ぬのは2% ほどのもんだという。この御人も、たぶん生きて帰ってきてくれることと思 う。ただ、この人が、帰ってきた後に何を言うかは見ものである。行ってき たわけでもなければ、実力で掴み取った山頂でもない。ただ、たまたま自然 に慈悲があって、たまたま生きて帰ることができただけである。どう転ぶか は知らないが、この雨天で神風のようにつっこんだことは、僕は単にバカだ としか思っていない。

(2015.5.7 13:11)(by script)




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